融資のためだから粉飾…は通用しない

粉飾決算など不正の相談をする人

販路開拓コンサルタントの千本(せんぼん)です。

帝国データバンク倒産動向調査によると、2023年のコンプライアンス違反による倒産が初の300件を超え、前年から26%増加したとの事です。コンプライアンス違反とは、架空の売り上げ計上や融通手形などの「粉飾」や、所得・資産の隠蔽などの「脱税」、その他「業法違反」などを含みます。

<データ元>『コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2023年度)』PR Times
調査機関:帝国データバンク

コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2023年度)

この様な実態を踏まえ、粉飾決算について少々お話ししたいと思います。

以前は公共団体から依頼を受けて支援コンサルティングを行うことも良くありましたが、派遣先で意外と多く目にしたのが「粉飾決算」です。たとえ社長ご本人が粉飾の事実に言及しなくても、経験値のある専門家であれば決算内容の違和感にある程度気付きます。そこで粉飾の可能性を指摘をすると、ほとんどの方はお認めになります。そしてその粉飾理由は「金融機関の融資を有利にするため仕方なく・・・」とお答えになります。

そこで粉飾の問題を、対金融機関の観点でお話します。

もし粉飾を黙ったまま金融機関から不正に融資を受けると「信用を損ねた」程度では済まず、刑事責任・民事責任の両方を負うことになるケースもあります。粉飾に手を付けて取り返しのつかない事になるかも知れません。世の中には粉飾の指南をしている者も存在する様ですが、専門家に言われるまま問題点を良く理解せず粉飾に手を染めたとしても、その責任を負うのは結果的に経営者です。

それに、一旦粉飾した数字をいずれは元に戻そうとお考えでしょうが、元に戻す時も粉飾をすることになるのですから、二重の問題があります。

しかしそもそも、金融機関は素人では有りません。融資審査の際、粉飾の疑いをチェックするのは当然です。提出された決算書を額面通り受け取るはずはありません。粉飾のポイントがどこにあるか、つまり決算書上の科目のどこをイジるかは、概ねパターンとして認識されています。例えば決算書上で、経常利益がほぼゼロ円の状態が何年も続いているとか、現金商売でもないのに現金残高が異様に多いとか、在庫高の動きが不自然、などといった事です。従って、金融機関は企業の決算内容を「引き直し」して見るものなのです。

ところで、今の融資の世界では「事業性評価融資」という考え方が重要です。これは事業の将来性を考慮した融資をすべしという考え方であり、金融庁から金融機関に対する通達でもあります。そこで大事なのは「事業計画の内容」であり、決算書についても粉飾の無いものを提示する事が重要です。

最後に別の観点から付け加えますが、粉飾は自社の財務状態の判断を狂わせます。会社の健康度を測定するためには「財務分析」が必要ですが、決算書の数字が虚偽であれば診断は不正確となり、問題発見も遅れます。人間の健康診断で血糖値やら血圧値などが不正確であれば、健康状態を見誤るのと同じです。いざという時にM&Aで会社を売却する場面でも、支障が出る可能性があります。

結論として(敢えて言うまでもありませんが)、粉飾は絶対ダメです。

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